「リスクセンス研究会」について

・理事長挨拶

 産業界における事故や不祥事の未然防止に向けて、産官学を挙げての数々の取組みが日々行われていますが、一方で、近年特に大きなプラント事故や不祥事の頻発が憂慮されるところです。

 事故等に対する未然防止活動は、技術要因に注目したハード面からのアプローチとヒューマンエラー・ヒューマンファクター等に注目したソフト面からのアプローチの両面からの対策が重要視されて来ましたが、昨今ではそれに加え、組織の要因に着目した低減策の研究が進められるようになってきております。

本研究会においても、組織行動の視点から事故や不祥事を見直すことで、それらの事故や不祥事の未然防止に資する研究を進めてきております。より具体的には、大きな事故や不祥事に至る前の予兆を察知できなかった理由、あるいは察知はできていてもそれに適切に対処できなかった理由等の解明、あるいは、長期にわたり事故や不祥事を起こしていない組織の運営状況の解析等に注目した研究であります。

研究成果として、リスクセンス検定®をひとつの形に致しました。組織と個人がリスクセンスを身に付けていれば、組織における機能不全の予兆を感じとり、感じ取った予兆に対して適切に対処することができ、事故や不祥事のない健全な組織状態を保つことが可能と考えます。このことは、ヒトに例えれば、東洋医学でいうところの“未病”の段階を自己診断により的確に捉え、セルフヘルスケアにより健康状態を保つことに相当します。

リスクセンス検定®は、
1) 組織が持つリスクセンスを定量的に評価すること。
2) 評価結果に基づき、その組織のセルフヘルスケア能力を自らが把握すること。
3) 更なる能力向上を通じて、事故や不祥事を未然防止できる組織体質の醸成に役立つこと。
を目標に開発を行い、現在、普及活動を行っています。

本研究会は、事故や不祥事の発生のない健全な組織状態を維持・向上させる手法の開発研究を通じて、社会に貢献していきます。

皆様のご支援、ご協力をお願い申し上げます。

特定非営利活動法人 リスクセンス研究会 理事長
東京大学 環境安全研究センター 教授
新井 充